私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
壁時計を見ると、午前二時過ぎ。
確か……鬼に血を吸われて……それで尊が来てくれたんだっけ。
血を吸われた時の感触が忘れられず、ゾクッとした。
「悪い夢でも見ましたか?酷くうなされていましたよ」
私が起きたのに気づき、尊が身を屈めながら私の額の汗を拭う。
「ちょっと……赤鬼が夢に出て来ちゃって。でも、平気よ」
ゆっくりと上体を起こすと、ニコッと笑ってみせた。でも、強がっているのはバレバレのようで……。
「身体が震えてますよ」
彼は冷静にそう指摘するも、私を包み込むように抱きしめた。
「尊?」
彼の突然の行動に狼狽える私。
「怖かったですね。駆けつけるのが遅くなって申し訳ありませんでした」
尊の表情は見えないが、その口調は重々しく、心から悔いているようだった。
でも、尊は何も悪くない。
悪いのは勝手な行動をした私だ。
「……違う。尊は悪くない。私が寄り道なんてしたからあんなことになったの。ごめんなさい」
彼の胸に手を当てて謝ったら、クスッと笑い声がした。
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