私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
「お嬢さまは【敬う】という言葉の意味をわかっていますか?相手を尊んで礼をつくすという意味です。あなたのようなじゃじゃ馬は尊敬に値しませんよ」
フッと鼻で笑うこの執事が憎らしい。
「あなたねえ、それでも私の執事なの!」
ベッドから出てキッと尊をひと睨みするが、彼は歯牙にもかけず、さっと濡れタオルで私の顔を拭くと、私の薄紫の夜着に手をかけた。
「ち、ちょっと!このエロじじい!淑女に何するのよ!」
顔を真っ赤にしながら猛抗議するが、彼は涼しげな顔で返しながら私の夜着を脱がす。
「淑女などこの部屋にはいませんが。恥ずかしいのであれば、明日からはちゃんと起きて自分で着替えてください」
紫の矢絣模様の着物と紺の袴を着せ、袴帯を手際よく結ぶ彼。
その衣からは、尊が焚き染めておいた桜のお香の匂いがした。
「私、朝は弱いのよ」
そう言い訳する私に彼は冷淡に言う。
「では、克服するようご自分でも工夫されてはいかがですか?脳味噌を使わないとボケますよ」
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