私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
彼の嫌味の応酬に閉口した。
何か言えば必ず彼は倍返ししてくる。
ホント、意地悪な性格だわ。
「次は髪ですよ」
尊は私の背後に周りテキパキと自分の仕事をする。
「もっと優しくしてよね」
憎まれ口を叩く私の髪を結いながら、彼は妖艶に微笑んだ。
「それは夜のベッドの中でということでしょうか?」
その目を見てゾクッとするも、彼の方に向き直ってその胸板をドンと叩いた。
「み、尊を私のベッドに入れるわけないでしょう!冗談はやめてよ!」
狼狽えながら半歩退く私をじっと見て彼は澄まし顔で言った。
「ええ。冗談です」
「みーこーとー!人をおちょくるのもいい加減にしなさいよ!」
「お嬢さま、早くしないと本当に朝食抜きになりますよ。いつもより十分遅れています」
ポケットから懐中時計を取り出して時間を確認し、彼は私の腕を掴んでスタスタ歩き出す。
だが、急に引っ張られ、身体が前のめりになった。
「キャッ!」
声を上げて転びそうになる私をすかさず尊が支える。
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