私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
旅行に来ても私達のやり取りは相変わらず。
「ホント尊と姉ちゃんは仲良いよな」
私たちを面白そうに眺める琥珀くんの声にハッとして、尊からパッと手を放す。
「全然仲良くないわよ。尊はいつも怒ってばっかりだし」
ムスッとしながらそんなことを言ったら、尊がゆっくりと腰を上げた。
「来たばかりですが、帰りましょうか?」
「あ〜、ごめんなさい。ほらほら、お酒でも飲んで」
おちょこにお酒を注いで尊に差し出すと、彼は訝しげな視線を投げる。
「このお酒はどこから?私は持ってきていませんが」
「私が台所からちょっと拝借してきたの」
ハハッと笑いながら答える私に彼は口煩く注意した。
「そんな泥棒みたいな真似しないでください」
いつもならここでムッとするところだが必死に耐えた。
せっかく来たのに帰るなんて嫌。
ここは我慢よ、撫子。
「うちの物だからいいじゃないの」
ニコニコ顔でそう返したら、彼は腰を下ろしておちょこを受け取った。
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