私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました

「ボーッとしてるから転びそうになるんです」
彼に注意され、カッとなって声を荒らげた。
「尊が急に歩き出すからでしょう!丁重に扱いなさいよね!」
「だったら、撫子お嬢さまも淑女らしく振る舞ってください。そんなんだから十八になっても縁談の話が来ないのですよ」
チクリと嫌味を言って、今度は私の手をしっかりと握って歩き出す。
さっきよりも歩調はゆっくり。
どうやら彼なりにちょびっと配慮してくれたようだ。
だが、なぜ手を繋ぐ?
「ねえ、もうちゃんと歩けるから手を離してくれない?」
「ダメです。お嬢さまは何もないところでよくコケますからね」
あのね、私はもう子供じゃないのよ……と反論しようと思ったが、彼にまたやり込められると思ってグッと堪えた。
ギュッと握った拳がブルブルと震える。
あー、ここで尊の頭を叩いたらどんなにスッキリするだろう。
そんな想像をしてストレスを発散しながら、一階に降りて、突き当たりにある茶室に向かった。
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