私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
うちの屋敷で畳なのはこの部屋だけ。
私の朝は朝食からではなく茶道から始まる。
「今日はあなたに亭主をやってもらいます」
そう言って尊が四畳半の茶室に入り、私も続いた。
まあ、茶室に入る作法や和菓子を頂く作法などは省略。
要は精神を鍛えるためらしい。
茶釜の横に尊が座り、私は茶釜の前に座った。
まず茶碗と茶筅を温め、お湯を捨てて茶碗を拭くと、茶とお湯を入れて茶筅で茶を立てる。
だが、尊の厳しい視線を感じて身体が硬くなった。
あー、各項目毎に点数がつけられていそう。
出来上がったお茶はダマが出来ていて、一目で失敗しているのがわかった。
だが、そのまま茶碗の正面を尊に向けて出したら、彼はすぐに怒らずに綺麗な所作でお茶を飲み、手を懐紙で拭いて茶碗を私の方に戻した。
「はっきり言ってマズいです。もう時間がないから終わりにしますが、もっと集中するように。雑念だらけですよ」
尊の批評を素直に受け止める。
「はい、すみません」
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