私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
確かに兄なら妹にキスなんかしない。
事実、秋は絶対にしないし、撫子に気安く触れない。
治癒だ……お仕置きだと何かと理由をつけて俺が彼女に触れるのはそうせずにはいられないから。
愛おしいから触れたくなる。
そうだ。俺は……撫子が好きなんだ。
「うっわ〜、尊って意外に鈍感だったんだ」
俺の反応が面白かったのかケラケラ笑う琥珀。
「煩い。このスケベ猫!」
ギロッと琥珀を睨みつけたら、彼はニヤリとした。
「尊、完全に素になってるよ。誰よりも好きなんだよね、姉ちゃんのこと。そんな尊に、おいらからひとつ忠告」
彼の勿体ぶった言い回しが気になり先を促す。
「忠告?」
「妖から見ても姉ちゃんはイケてる。おまけに優しくて心も綺麗だ。姉ちゃんの血は特別って話だけど、血ではなく、姉ちゃん自身を欲しがる妖がそのうち現れるかもね」
人間だけではなく妖にとっても撫子は魅力的な存在とは厄介だ。
赤鬼も現れたし、今後も上級の妖が人間界に来る可能性がある。
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