私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
「ただでさえ気苦労が多いのに、不吉なことを言うな」
琥珀の話に深い溜め息をつくと、彼は俺の肩をポンと叩いた。
「おいらも気をつけるけどさあ。姉ちゃんにちゃんと好きだって伝えて、しっかり捕まえておけよ。姉ちゃんも尊が好きみたいだけど、尊よりも鈍感なんだからさあ」
撫子も俺が好き……。
彼女が俺に好意を持っているのはなんとなく気付いていた。
最近俺と接する時、彼女は赤面して視線を逸らすことが増えてきたから。
だが、年上に憧れる時期だし、恋愛感情ではないと思っていたのだが、傍から見ていると違うらしい。
それを妖に教えられるとはな。
「なんだろう。お前に言われると無性に腹が立つ」
特に上から目線の言い方が気に食わない。
スーッと目を細めて琥珀を見れば、彼は二パッと笑った。
「事実だからだよ」
その目はとても澄んでいて綺麗だった。
『目はそのものの心を表す』と子供の頃、父が教えてくれた。
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