私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
柔らかくて温かくて……その唇の感触に身体が熱くなる。
過去に二回、彼女を治癒するために口付けたことがあったが、いずれの時もその唇は冷たかった。
だが、今彼女はしっかりと目覚め、俺のキスに反応している。
彼女は俺の腕をギュッと掴んで、キスに応えていたが急に息苦しくなったのか、俺の胸に手を当てて止めた。
「……なんで?」
酷く困惑した顔で撫子は俺を見つめる。その顔を見て我に返った。
しまった。
いつもは彼女に触れても、自分をコントロールできていたのに、今は完全に我を忘れていた。
キスの刺激が強すぎたのか、それとも風磨家の若造の件でかなりショックを受けたのか、彼女の身体から力が抜け俺の胸に倒れ込んだ。
「撫子?」
その名を呼ぶが、彼女は応えない。
「……やり過ぎた」
彼女を抱き抱えポツリと呟く。
しかも、この状態で気を失うなんて最悪だ。
頼むから裸で気を失わないでほしい。
撫子を抱いたまま脱衣所に行き、浴衣を着せる。
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