汚れたお金
「あの、これは必要ないのでお返しします」
「は?」

俺が首を傾げて十円玉を受け取ると、ザラリと嫌な感触が掌に当たる。手の中にある十円玉をよく見ると、それは赤茶色に変色した百円玉だった。色だけで判断して間違えて出してしまった。錆びた百円玉を気味悪く思った俺は、おつりを貰う前にレジに置いてある募金箱にその百円玉を投げ込んだ。
おつりを貰い、店から出る俺の背中を店員が他の店員に愚痴を言う。

「最悪。あんな汚いお金を入れるなんて」
「だよね。それにあの財布から出したお金は錆びた臭いがするし…」

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