耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「んっ、」

小さな吐息と共に開かれた唇の間。怜はそこから忍び込みたくなる衝動をぐっと堪え、唇を離した。

怜が離れるとすぐに、美寧がゆっくりと瞼を持ち上げた。見上げてくる瞳の奥が少し物足りなさそうに見えるのは、惚れた欲目だろうか。

抱き寄せる手で背中をゆっくりと撫で、ふわふわとした髪の感触をしばらく楽しんでから、口を開いた。

「“練習”……しますか?」

「え……?練習?」

「はい」

頷いた怜に、美寧は長い睫毛を(しばた)かせ、きょとんと小首を傾げる。

「もう少し“恋人の練習”を続けませんか?」

「恋人の練習………まだ何か必要なことがあるの?」

無垢な瞳に見つめられ、怜は微苦笑を浮かべる。

「俺はもっとミネに触れたい……でもこの前みたいにいきなり触ると驚いてしまうでしょう?」

『この前』と言われ、美寧の頬に朱が差す。
素肌を直接撫でられたことは、美寧にとってはずいぶんと衝撃だった。

「ダメでしょうか……?」

サラリとした前髪を揺らしながら、怜が顔を傾けた。

「だ、だめじゃない……」

握ったままだった怜の服を更にぎゅっと握りしめ、美寧はその胸に顔を埋めた。

「私も……い…の?」

小さく聞こえた声に「何ですか?」と訊き返す。

「“練習”……私も触っていいの?」

「え?」

「私もれいちゃんに触りたい……って思うのはダメ?」

白い肌が桃色に染まるのがフロアスタンドの柔らかい灯りでもよく見る。
怜は、あの時美寧が言ったもう一つの台詞を思い出した。

『私だってれいちゃんに触れたい。ぎゅってするのも、してもらうのも大好き。キ、キスも……』

怜は胸の内から湧き起こる得体の知れない衝動をグッと飲み込み、美寧に向かって微笑んだ。

「あなたのお好きなように」

頬を染めた可愛い恋人が嬉しそうにふにゃりと笑うのを見下ろしながら、怜は美寧の背中に回した腕に力を込め抱き寄せる。そしてもう一度その小さな唇に自分のものを寄せ、重ね合わせる直前に囁いた。

「早く慣れてください———“俺の恋人”に」
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