耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
目を見開いた美寧の唇を、今度は深く奪う。

男と女の諸々に未だ慣れない初々しい恋人を、怖がらせないよう気を配りながら少しずつその細い体に触れていく。

頭、耳、首、肩、腕、背中———
服の上から優しく撫でると、最初は強張っていた美寧の体から少し力が抜ける。

美寧の腕が怜の背中に回り、ぎゅっとしがみつかれる。
その仕草に、愛おしさと共にもう一つの感情がふくれあがる。

このままこの小さな体をソファーに沈めたい。

そんな劣情に駆られるもう一人の自分を抑え込み、今はただ愛する人の不安を解消することだけに意識を集中する。

「実ります」

息継ぎの合間にそう囁くと、美寧が「え?」と言う。

「初恋は実ります。俺はずっとミネのそばにいますから」

目を丸くした美寧は、次の瞬間、瞳を細め微笑んだ。
泣き出す一歩手前のような微笑みだった。


ゆっくりでいい。彼女のペースで、ゆっくりと。
自分達らしく、“恋人”として進んで行けばいい。

何より大事なこの人の笑顔を守るためなら、何を捨てても構わない。
たとえそれがもう一人の自分自身だとしても———

そう固く心に誓った。


けれどこの時怜は知らなかった。

この平穏な暮らしを揺るがす波乱が、すぐそこまで迫っていることを———






【第七話 了】 第八話につづく。
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