耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「ええ。医師としての私の見立ては間違っていなかったわ」
「なんで、そんな………」
「私も詳しく訊いたわけではないのだけど………フジ君から聞いたところだと、美寧ちゃんは食べること自体を嫌悪していた様子だったそうよ」
「食べること自体を嫌悪……」
「ええ。それをこの数か月で美寧ちゃんを正常範囲内まで戻したのは、ひとえにフジ君のおかげ。だから『たぶらかした』なんてありえない」
「っ、」
「それなのに、フジ君を悪者にした上に彼の家を『こんなところ』なんて言われたら、美寧ちゃんもさすがに怒ると思う」
「………」
黙り込んだ聡臣に代わって、今度は高柳が涼香に尋ねる。
「———ユズキ。お前、こうなると分かっててついてきたのか?」
今回、聡臣を藤波家に連れて行くのは高柳一人のはずだった。
けれど直前になって、ふと思い立ち、共通の友人である久住涼香に連絡をとった。
美寧の主治医でもある彼女に様子を聞いておくに越したことはない。もし何か不都合があれば、聡臣を連れて行く日を延ばそう。そう考えたのだ。
すると、涼香は『自分も一緒について行く』と言い張った。
「全部分かってたわけじゃないわ……でも、ナギが美寧ちゃんのお兄さんを連れてくると聞いた時、彼女がフジ君に黙ったままにしていることがあるとしたら。私が間に入ってあげたいと思っただけ」
「そうか……」
高柳が頷く。彼は大学時代からのこの友人が、もう一人の友人である藤波怜のことをずっと気にかけていることを知っていた。
「ありがとうございます」
助手席からまた振り返った聡臣が、涼香に頭を下げる。
妹とは違う垂れ目。その下にある泣きぼくろが妙にセクシーだ。この手の男はどういう顔をしたら女を懐柔できるか知っている。
情けない顔をして謝る男を冷ややかに一瞥した涼香は、「あなたからのお礼の言葉は必要ないわ」と御曹司の謝辞を一蹴する。
「私は美寧ちゃんとフジ君の幸せを願ってるの。だから、あなたからお礼を言われる筋合いはない」
ピシャリと言った涼香の言葉に、聡臣が目を見張る。そしてもう一度頭を下げると、何も言わず前に向き直った。
「なんで、そんな………」
「私も詳しく訊いたわけではないのだけど………フジ君から聞いたところだと、美寧ちゃんは食べること自体を嫌悪していた様子だったそうよ」
「食べること自体を嫌悪……」
「ええ。それをこの数か月で美寧ちゃんを正常範囲内まで戻したのは、ひとえにフジ君のおかげ。だから『たぶらかした』なんてありえない」
「っ、」
「それなのに、フジ君を悪者にした上に彼の家を『こんなところ』なんて言われたら、美寧ちゃんもさすがに怒ると思う」
「………」
黙り込んだ聡臣に代わって、今度は高柳が涼香に尋ねる。
「———ユズキ。お前、こうなると分かっててついてきたのか?」
今回、聡臣を藤波家に連れて行くのは高柳一人のはずだった。
けれど直前になって、ふと思い立ち、共通の友人である久住涼香に連絡をとった。
美寧の主治医でもある彼女に様子を聞いておくに越したことはない。もし何か不都合があれば、聡臣を連れて行く日を延ばそう。そう考えたのだ。
すると、涼香は『自分も一緒について行く』と言い張った。
「全部分かってたわけじゃないわ……でも、ナギが美寧ちゃんのお兄さんを連れてくると聞いた時、彼女がフジ君に黙ったままにしていることがあるとしたら。私が間に入ってあげたいと思っただけ」
「そうか……」
高柳が頷く。彼は大学時代からのこの友人が、もう一人の友人である藤波怜のことをずっと気にかけていることを知っていた。
「ありがとうございます」
助手席からまた振り返った聡臣が、涼香に頭を下げる。
妹とは違う垂れ目。その下にある泣きぼくろが妙にセクシーだ。この手の男はどういう顔をしたら女を懐柔できるか知っている。
情けない顔をして謝る男を冷ややかに一瞥した涼香は、「あなたからのお礼の言葉は必要ないわ」と御曹司の謝辞を一蹴する。
「私は美寧ちゃんとフジ君の幸せを願ってるの。だから、あなたからお礼を言われる筋合いはない」
ピシャリと言った涼香の言葉に、聡臣が目を見張る。そしてもう一度頭を下げると、何も言わず前に向き直った。