耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
今は誰も住んでいないはずの家に、どうして鍵が掛かっていなかったのか。
美寧は疑問に思いながらも、幼い頃から過ごした家が懐かしくて、迷わず足を踏み入れた。
電気のスイッチを押しても明かりは点かない。けれど、たとえ真っ暗闇の中でもどこに何があるか美寧には分かる。物心つく頃からずっと住んでいた家なのだから。
手探りで家に上がり、玄関ホールから一番手前のドアを開ける。だんだんと暗さに目が慣れてきた美寧は、部屋の中を見渡した。
使われていないテーブルやストーブには、大きな布が掛けられている。
部屋の中ほどの一人掛けのソファーにかかっている布をはぐ。そこに腰を下ろすと、美寧はやっと深い息が出来る気がした。そこは祖父の定位置だった。
主を失った家はひっそりと静まり返っている。
家の中は冷えきっていて、コートを着たままでも寒い。美寧はソファーに足を乗せて膝を抱え、さっきはいだ布を体に巻き付けた。
(ただいま……おじいさま………)
こんなふうに帰ってくることになるとは思わなかった。
この家の主だった祖父が亡くなってしまい、美寧が父の家に戻ればこの家は誰も住まない。通いの家政婦も料理人も必要ない。もしかしたら近いうちに売りに出されてしまうかもと思っていた。
祖父には亡くなった母以外にも息子がいた。美寧にとっては伯父に当たる人だ。きっとその人がこの家の管理をしているのかもしれない。勝手に入ってしまったことをきちんと謝らなければ———。
(れいちゃん……今頃きっと心配してるよね………)
スマホは電源を切ったまま鞄の中に入れっぱなし。
こんなに遅くまで連絡を入れずに留守にしたことはない。そもそも、怜が帰宅する時間に家にいないのも初めてだ。
美寧は疑問に思いながらも、幼い頃から過ごした家が懐かしくて、迷わず足を踏み入れた。
電気のスイッチを押しても明かりは点かない。けれど、たとえ真っ暗闇の中でもどこに何があるか美寧には分かる。物心つく頃からずっと住んでいた家なのだから。
手探りで家に上がり、玄関ホールから一番手前のドアを開ける。だんだんと暗さに目が慣れてきた美寧は、部屋の中を見渡した。
使われていないテーブルやストーブには、大きな布が掛けられている。
部屋の中ほどの一人掛けのソファーにかかっている布をはぐ。そこに腰を下ろすと、美寧はやっと深い息が出来る気がした。そこは祖父の定位置だった。
主を失った家はひっそりと静まり返っている。
家の中は冷えきっていて、コートを着たままでも寒い。美寧はソファーに足を乗せて膝を抱え、さっきはいだ布を体に巻き付けた。
(ただいま……おじいさま………)
こんなふうに帰ってくることになるとは思わなかった。
この家の主だった祖父が亡くなってしまい、美寧が父の家に戻ればこの家は誰も住まない。通いの家政婦も料理人も必要ない。もしかしたら近いうちに売りに出されてしまうかもと思っていた。
祖父には亡くなった母以外にも息子がいた。美寧にとっては伯父に当たる人だ。きっとその人がこの家の管理をしているのかもしれない。勝手に入ってしまったことをきちんと謝らなければ———。
(れいちゃん……今頃きっと心配してるよね………)
スマホは電源を切ったまま鞄の中に入れっぱなし。
こんなに遅くまで連絡を入れずに留守にしたことはない。そもそも、怜が帰宅する時間に家にいないのも初めてだ。