耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「私、あの時の何もできない自分じゃない。泣いてばかりだったあの時とは違う。それも全部れいちゃんのおかげなんだ」

そうだ。怜のおかげでこんなにも色々なことが出来るようになったのだ。

だからもうやめよう。
何も出来ないと嘆くことも、嫌なことから逃げ出すことも。

誓ったじゃないか、怜の父と母に。『彼は私が守る』と。
甘えてばかり逃げてばかりの自分では、彼を守ることなんて出来ない。

(もう逃げたりしない。私にだって出来ることがきっとあるはずだもん)

もしかしたら、怜と一緒にいることは出来なくなるかもしれない。
手をつなぐことも抱きしめることも、もう二度とないのかもしれない。

けれど、それでも。

自分にできること全部で怜を守りたい。

「ああそうか。私に出来ること、ちゃんとあるじゃない———」


父に言おう。「怜の研究を助けて」と。


たとえもう二度と会えなくても。他の人に嫁がされるとしても。
自分のすべてをかけて、彼を守るのだ。

『オムライスも、梅サイダーも、プリンも。みんなあなたの為に作る』

思い出すだけで胸の中が温かくなる彼の声。
それはこれからもずっと美寧の心を温め続けるだろう。会えなくても無くなったりしない。
ずっとずっと永遠に美寧の胸にあって、宝物のように輝きつづける。

『だからずっと俺のそばにいて———愛してる。美寧』

「うん。私も愛してる。だいすきよ、れいちゃん」

瞳を閉じ、祈るように組んだ両手を握りしめた。


そうと決めたら早くしなければ。夜中だけれど父に連絡をしよう。いや、夜中の方がきっと連絡がつくだろう。いつも父が家に帰ってくるのは日付が変わる頃だったのだから。

固い決意を胸に家に戻ろうと振り向いた瞬間———



美寧の視界が黒いものでふさがれた。と同時に、きつく抱きすくめられていた。





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