耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
[3]
包み込まれたのは、香水をつけないその人自身の香り。
ほのかな甘さと爽やかさに、視界をふさがれていてもすぐに分かった。
それが誰なのか———
「れっ、」
「なんで黙っていなくなった!?」
「っ、」
聞いたことのない怒気のこもった声に息をのむ。けれど、声の主はそれには構わず、更に語気を鋭くした。
「あなたが突然いなくなって……俺がどれほど心配したと思ってる!?」
背中に回わる腕にさらに力が込められる。ぎゅうぎゅうと痛いほど抱きしめられ、開いたコートの間の固い胸に、頬を押しつけられる。
窒息しそうなほどきつく抱きしめられながら、美寧は両手を脇にだらりと垂らし目を見開いて固まっていた。
「勝手にいなくなるなんて許さない………実家に戻りたくなったのなら言えばいい。俺のことが嫌になったのならそう言えばいい」
怜の腕の中にいる美寧には、彼の顔は見えない。けれど、降ってくる声がひどくつらく苦しそうで、美寧は反射的に首を左右に振った。
するとまた、美寧を抱きしめる腕にぎゅっと力がこもる。
「あなたを無理やり閉じ込めることなんてしない。あなたが望むのなら、別々に暮らしても構わない。それがあなたの幸福なら、俺はいくらでもそれを受け入れる………」
絞り出すよう言った掠れた声に、美寧の垂れている手が、一瞬ピクリと動く。
「あなたは家族のことが大好きで、本当はずっと一緒に暮らしたいと思っていたはずだ。それなのに、やっとその夢が叶う時になって邪魔をするが俺だなんて、………そんなこと、自分でも許せるわけがない」
怒りの滲む声。それを抑え込むためなのか、怜の声が一段と低くなる。
「だけど、あなたが俺の家を出て家族と一緒に暮らし始めたとしても、絶対あなたのことを手放したりしない———絶対に、だ。もしあなたのお父さまに俺とのことを反対されたとしても、何度でも通って説得するつもりだった」
包み込まれたのは、香水をつけないその人自身の香り。
ほのかな甘さと爽やかさに、視界をふさがれていてもすぐに分かった。
それが誰なのか———
「れっ、」
「なんで黙っていなくなった!?」
「っ、」
聞いたことのない怒気のこもった声に息をのむ。けれど、声の主はそれには構わず、更に語気を鋭くした。
「あなたが突然いなくなって……俺がどれほど心配したと思ってる!?」
背中に回わる腕にさらに力が込められる。ぎゅうぎゅうと痛いほど抱きしめられ、開いたコートの間の固い胸に、頬を押しつけられる。
窒息しそうなほどきつく抱きしめられながら、美寧は両手を脇にだらりと垂らし目を見開いて固まっていた。
「勝手にいなくなるなんて許さない………実家に戻りたくなったのなら言えばいい。俺のことが嫌になったのならそう言えばいい」
怜の腕の中にいる美寧には、彼の顔は見えない。けれど、降ってくる声がひどくつらく苦しそうで、美寧は反射的に首を左右に振った。
するとまた、美寧を抱きしめる腕にぎゅっと力がこもる。
「あなたを無理やり閉じ込めることなんてしない。あなたが望むのなら、別々に暮らしても構わない。それがあなたの幸福なら、俺はいくらでもそれを受け入れる………」
絞り出すよう言った掠れた声に、美寧の垂れている手が、一瞬ピクリと動く。
「あなたは家族のことが大好きで、本当はずっと一緒に暮らしたいと思っていたはずだ。それなのに、やっとその夢が叶う時になって邪魔をするが俺だなんて、………そんなこと、自分でも許せるわけがない」
怒りの滲む声。それを抑え込むためなのか、怜の声が一段と低くなる。
「だけど、あなたが俺の家を出て家族と一緒に暮らし始めたとしても、絶対あなたのことを手放したりしない———絶対に、だ。もしあなたのお父さまに俺とのことを反対されたとしても、何度でも通って説得するつもりだった」