耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
[1]


パチパチと、ストーブの中で薪がはぜる音がする。

いつの間にか火を入れられたストーブの中は火がゆらゆらとうごめき、それが部屋全体を温かく包み込む。
さっき美寧が一人で膝を抱えていたソファーは、今は四人の人間で埋まっていた。

壁際のコーナーソファーには怜と美寧。
美寧は薄着のまま庭に長い間いたことを歌寿子に叱られ、薪ストーブに一番近いところに座らされた。

ローテーブルを挟んで、二つ並んだ一人掛けソファーの手前に兄聡臣(あきおみ)。そして、美寧から一番離れたところに父総一郎(そういちろう)が座っている。

庭にいた美寧と怜の前に、聡臣と共に現れたのは父だった。

思いも寄らぬ父との再会。美寧は驚きのあまり、涙が一瞬でピタリと止んだ。永遠に止まらないかも、と思っていたのが嘘のように。

聡臣に話をするため家に中に入るよう促され、美寧は家の中に戻ったのだった。


四人という人間が集まっているのにも関わらず、誰一人口を開かない。
ストーブの薪がはぜる音以外ほとんど物音のしない静かな居間で、美寧は時々こっそりと父を盗み見ていた。

ほっそりとシャープな輪郭に、兄とよく似た二重の垂れ目。兄の垂れ目は父親譲りなのだろう。真横に伸びる眉の間と目尻の横には、深い皺が刻まれている。
ところどころ銀色がまじる黒髪は、まるで彼の性格を表すかのように、しっかりと固く後ろに流されている。

半年ぶりに見る父の姿は、最後に見た時よりも心なしか小さく見えた。
< 277 / 427 >

この作品をシェア

pagetop