耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー

『あのぼんぼんの甘ったれた性根を、私が叩き直してあげるわ』

颯介の手紙に目を通し終えた美寧に、涼香が言った。
彼には変に思い込みの激しいところと、大人に対しての不信感があるようだ、という。そして、そこそこの裕福な家庭の末っ子として育てられたため、ハッキリ言って『あまちゃん』らしい。

涼香のズバズバと容赦のない指摘に、本人ではない美寧まで驚いてしまう。

『あの子、小学校教諭志望らしいわ。だからちょうどいいじゃない?うちで雑用をしながらこどもの扱いと、保護者の対応とかを覚えたらいいでしょ』

厳しいことを言いながらも、やっぱり涼香は颯介自身のことも考えているのだ。
美寧は感心したように頷いた。
けれど、涼香の次の台詞に、言葉を失う。

『まっ、殴り飛ばした責任くらい持たないとね』

『えっ!なぐっ——!?』

『あれ?聞いてなかった??』

涼香が美寧の隣に視線をずらす。

『わざわざ言うことでもないだろう?ユズキが彼をグーで殴ったことなんて』

『グ、グー!?』

『でも、ユズキが殴ってなかったら、俺が殴るところだった。だけど、それだと後々(あとあと)問題になったかもしれない……結果として助かったよ、ありがとう、ユズキ』

『……それは、どういたしまして』

怜から顔をそむけた涼香は、少しぶっきらぼうに答えた。長い髪がかけられた耳の端がほんの少しだけ赤くなっている。

『確かに、准教授が学生に手を上げたとなれば、問題になってもおかしくないわね』

涼香の言葉に美寧の顔を青くなる。そんな美寧の肩を、涼香が励ますようにポンポンと叩き言った。

『そういうわけだから、美寧ちゃんはあの子のことを無理に許さなくてもいいのよ?今はとりあえず私に預けてくれたらいいから。殴ったのに放りだしたら、また大人に対する不信感が強まるだけだと思うし。まぁ、うちも人手が増えて助かるし。結果オーライでしょ』

そう言って笑ってくれた。



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