耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「明日は積もるかなぁ………」

この町の雪景色も見てみたい。そう思いながら呟くと、怜が「ミネは雪が好きですね」と言う。

「うん、大好き!触ると冷たいけど、なんだかあったかい気持ちになるもの。真っ白なのもきれいだし。おじいさまのお庭では、昔から雪遊びしたんだよ?」

「とてもきれいな庭でしたね」

「うん!春もね、たくさんのお花ですごくきれいなの!夏は緑が深いし、秋もね、もう真っ赤な楓がすてきなんだよ?」

「あなたの好きな紫陽花が咲いているのも見てみたいですね」

「うん、私もれいちゃんと一緒に見たい!」

「いつでも行けますよ。あそこはもう一つのあなたの“実家”なのですから」

「そっかぁ……そうだよね」

美寧の顔がみるみる笑顔になる。

美寧の祖父の家、杵島邸は、誰の手にも渡らず、ずっとそこにあるという。いや、『誰の手にも渡らない』という言い方には語弊がある。
実際は、とある人の手に渡ったのだから———

それを教えてくれたのは、歌寿子だった。


『いとさんは遠慮せんと、いつでも帰ってきはったらええんだす』

父と和解した翌朝、祖父の家の台所で、歌寿子はそう言った。
そして、その後すぐにこう続けた。

『ここは———この(うち)は、もういとさん(・・・・)所有物(もん)なんやさかい』

意味が分からず目を瞬かせる美寧に、『旦那様(だんさん)から、お聞きやないんだすか?』と驚いた歌寿子が、美寧に教えてくれた。
そのことを、朝食の前に父に訊いたところ、父は『そうだ』とあっさり認めた。

杵島邸は、美寧の名義に変更してある———と。

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