耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
雪が空からふわふわと舞い降りる。二人はその中を並んで静かに歩いていく———しっかりと手を繋いで。
あと少しで公園を抜ける、という時、怜がポツリと言った。
「あなたのおかげですね」
「え?」
隣を振り仰いだ美寧。すると怜は、美寧の頭についた雪をそっと払う。
「ここであなたのことを見つけてから、あの家にはたくさんの人が訪れるようになった。家だけじゃなくて、俺の周りはずいぶんにぎやかになった———あなたのおかげです」
「れいちゃん………」
「あの日、ここであなたを見つけられて、あなたと出会えて、本当に良かった。———ありがとう、ミネ」
ふわりと美寧の上に降りたその言葉は、じわりと溶けて胸の中にしみ込んでくる。美寧の胸を温めていく。
柔らかく細められた瞳に、美寧の胸がきゅんと甘く鳴った。
「ううん、私もおんなじ。ひとりぼっちじゃなくなった。本当はひとりぼっちじゃなかったんだって気付けた。私……たくさんの人と出逢って、いろいろな事を知って、あの頃よりも少しだけ強くなれた気がするの」
隣を見上げながらそう言った美寧。少しだけ端の上がった丸い瞳で、まっすぐに見あげてくる彼女に、怜は黙って頷く
「それもみんな、れいちゃんのおかげ。あの日、れいちゃんが私のことを拾ってくれたから。だから、私も『ありがとう』だよ」
「じゃあ、俺たち一緒ですね」
怜は「ふふっ」と笑った、そのすぐあと。ちょうど藤波家の屋根が見えてきた。