耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
流れるような文字で【すし政】と書かれた藍色の暖簾をくぐって入った所は、カウンターと小上がりになった小さな個室が二部屋あるだけのこじんまりとした店だった。
和モダンで統一された内装と少し暗めのライトが落ち着いた空間を演出していて、カウンターもひと席ずつゆったりと作られている。
【すし政】は著名人も訪れるという隠れ家的な寿司屋なのだ。
それゆえ、予約が取れないことも多いらしい。『らしい』というのは、涼香が怜との電話越しにそう言っていたのを聞いたからだ。
職業柄色々なところに顔が利く涼香が、『突然美寧ちゃんを連れ出したお詫びに』と、この店に予約を入れてくれたのだ。
先々代が始めたというその店は、知る人ぞ知る名店。そんな名店で食べるお寿司が美味しくないわけはない。寿司を握ってくれる大将の腕は本物だ。
けれど怜と暮らし始めるまでの一年間、美寧はどんなご馳走を口にしても『美味しい』と思えなかった。
けれど今、美寧にとって “怜と一緒に食べる食事”はこんなにも『美味しい』。
「さっき頂いたウニもすごくクリーミーでおいしかったな……」
思い返して思わずうっとりとすると、ふふっと笑った怜が「おかわりしますか?」と言う。
「う~ん、……色々なものを食べたいから、おかわりはがまん。たくさんは入らないし……」
一貫は店によって二つか一つかまちまちだ。すし政では一貫は一つのことで、注文に応じて一貫から握ってくれるのだが、どんなに美味しくても寿司は“ご飯”だ。量が入らない美寧にとってはあれもこれも食べるのは難しい。
目の前のネタが入ったガラスケースをじっと見つめていると、よっぽど残念そうな顔になっていたのだろう、怜は目元を緩めながら美寧に言った。
「食べたいと思えるうちに頼んでみたらどうですか?もしお腹がいっぱいになったら、残りは俺が引き受けますから」
「いいの……?」
「もちろん」
頷いた怜に、美寧はぱぁっと目を輝かせた。
カウンターの向こう側では白い作務衣を着た大将が、ひそかに口の端を上げていた。
和モダンで統一された内装と少し暗めのライトが落ち着いた空間を演出していて、カウンターもひと席ずつゆったりと作られている。
【すし政】は著名人も訪れるという隠れ家的な寿司屋なのだ。
それゆえ、予約が取れないことも多いらしい。『らしい』というのは、涼香が怜との電話越しにそう言っていたのを聞いたからだ。
職業柄色々なところに顔が利く涼香が、『突然美寧ちゃんを連れ出したお詫びに』と、この店に予約を入れてくれたのだ。
先々代が始めたというその店は、知る人ぞ知る名店。そんな名店で食べるお寿司が美味しくないわけはない。寿司を握ってくれる大将の腕は本物だ。
けれど怜と暮らし始めるまでの一年間、美寧はどんなご馳走を口にしても『美味しい』と思えなかった。
けれど今、美寧にとって “怜と一緒に食べる食事”はこんなにも『美味しい』。
「さっき頂いたウニもすごくクリーミーでおいしかったな……」
思い返して思わずうっとりとすると、ふふっと笑った怜が「おかわりしますか?」と言う。
「う~ん、……色々なものを食べたいから、おかわりはがまん。たくさんは入らないし……」
一貫は店によって二つか一つかまちまちだ。すし政では一貫は一つのことで、注文に応じて一貫から握ってくれるのだが、どんなに美味しくても寿司は“ご飯”だ。量が入らない美寧にとってはあれもこれも食べるのは難しい。
目の前のネタが入ったガラスケースをじっと見つめていると、よっぽど残念そうな顔になっていたのだろう、怜は目元を緩めながら美寧に言った。
「食べたいと思えるうちに頼んでみたらどうですか?もしお腹がいっぱいになったら、残りは俺が引き受けますから」
「いいの……?」
「もちろん」
頷いた怜に、美寧はぱぁっと目を輝かせた。
カウンターの向こう側では白い作務衣を着た大将が、ひそかに口の端を上げていた。