耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
自動ドアを通ってエスカレーターに乗り、四階で降りた。頭上の案内板には【レディースファッションフロア】と書いてある。
「れいちゃん?ここにご用事?」
怜が欲しいものがこの階にあるのだろうか。
首を傾げる美寧を見た怜が、「はい」と言って微笑んだ。
女性ものの洋服店が並ぶ通路を、怜に手を引かれゆっくりと歩く。
飾られた洋服はどれもとてもお洒落で、美寧は歩きながらキョロキョロと忙しなく顔を動かしてしまう。さっき涼香と一緒に来た時は一つ下の階は色々見て回ったけれど、この階までは上がってこなかった。
美寧は自分が流行に疎いことは分かっている。それは、美寧がファッション全般に興味を持たなかったことが大きいが、お洒落に興味を持つ年頃に、祖父と暮らしていたことも一因かもしれない。
祖父との暮らしはとても穏やかなもので、身の回りのものはすべて流行りを追うというよりも定番で長く使える上質なものだった。それも、祖父の家に定期的にやってくる百貨店の外商が用意した物の中から自分の好みのものを選ぶだけでいい。
山に囲まれた田舎暮らしのせいもあるが、わざわざ街中まで出なくても必要なものを揃えることが出来た環境も、美寧が流行に疎くなった原因だろう。
だから今日は、涼香と買い物をしている時からずっと、目にするものすべてが新鮮だった。
そしてそれはもっか継続中。
どの洋服もキラキラと輝いて見える中、通りかかった店のガラスの向こう側、マネキンが着ている服が目に留まった。
(あのお洋服、すごく素敵……)
美寧が見惚れたマネキンが着ているのは、白いスカート。
ウエスト部分にはたっぷりとヒダが入り、幾重にも重なるオーガンジーが裾に向かってふんわりと広がっている。
「ミネによく似合いそうですね」
「えっ?」
マネキンとは逆側から降ってきた声に、美寧は目を丸くした。
一瞬頭に浮かんだ言葉を、自分は口に出したのだろうか。それくらい絶妙なタイミングでそう言われたのだ。