偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「はっ。
結婚してるからなんなんだ?
それが他の女に手を出さない保証になるなら、不倫とかあるはずないだろうが」

「……」

それは正論ではあるけれど、だからといって結婚して必ず不倫するわけでもない。
でもいまの彼にはいくら反論したところで、聞き入れてもらえそうになかった。

「李亜は俺が買った、俺のものだ。
誰にも、渡さない……!」

「……!」

強引に唇が重なり、舌がねじ込まれる。
バタバタと暴れたけれど、力は少しも緩まなかった。
呼吸さえも奪う口付けに、あたまがくらくらしてくる。
けれどそれはどこか……彼が、泣いているように感じさせた。

「……わかったか」

唇が離れ、汚れた自身の唇を彼がぐいっと拭う。
じっと私を見つめる瞳は、後悔とつらさ、不安で染まっていた。

「……御津川、さん?」

手を伸ばし、そっとその頬に触れる。
途端に彼の頬に、かっと朱が走った。
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