偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「……うるさい」

さらに手を伸ばし、彼を抱き寄せる。
拒否されるかと思ったけれど、彼はされるがままになっていた。

「私はどこにも、行きません」

「……うるさい」

「そんなに不安にならないで、大丈夫です」

「……うるさいんだよ」

私の上にいる、彼の背中をぽん、ぽんと叩く。
それ以上、彼はなにも言わない。
私もそのまま、黙っていた。

「……風呂、入って寝るか」

「そう、ですね」

しばらくして、彼がゆっくりと起き上がる。
さらに手を差し出すから、その上に自分の手をのせて私も起き上がった。

「一緒に入るか」

「お断りです」
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