偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
にっこりと笑顔を作って彼の顔を見る。

「ま、そうだよな」

彼はニヤリと右頬を歪ませ、寝室を出ていった。
もう、さっきまでの変な空気はない。

「……俺のもの、か」

ベッドを出て、ドレスを脱いで部屋着に着替える。
彼を不安にさせているのは自分だという自覚はある。
でも。

「買われた、から」

あれさえなければ素直になれるのだ、あれさえなければ。

「夏原社長に連絡してみようかな……」

ぼーっと、バッグの中から出した名刺を眺めていた。
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