偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「家のことを心配しているなら、いままでどおりちゃんと両立させるし!」

「そんなの、どうでもいい。
いままでだって別に、しなくてもかまわなかった」

私を見下ろす、眼鏡の奥の瞳はガラス玉みたいでなんの感情も読み取れない。

「なら、なんでダメなの!?
なんでも好きにしていいって言ったじゃない!」

「なんでも、に、これは入ってない。
働くことも、今後、就職活動をすることも許さん」

私をひとり残し、彼はリビングを出ていった。

「なんで……」

わかっていたことではあるけれど、それでも凹んだ。
あの人はいったい、私をどうしたいんだろう?

「もう、わかんないよ……」

働いてお金を稼ぎ、七百万を返す。
それが、私の目標だった。
FoSに戻れるんなら、生活費の一切を御津川氏に負担してもらっているいま、一年でそれくらい貯めることは容易い。
貯めて、返して、対等になって、……好きだと伝える。
でも、その野望は無残にも散ってしまった。
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