偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「もういい、一生、好きだなんて言ってあげない」

膝を抱えてソファーの上で丸くなれば、弱音ばかりが漏れてくる。

「知らない、知らない」

無意識に耳を触って鈍い痛みが襲ってきた。
確かに少しでも希望を通しやすくする目的もあったが、ただ単純に彼とお揃いにして喜んでもらいたかった。
私の口にできない、気持ちを伝えたかった。
なのになんで、こんな喧嘩みたいになっているんだろう。

その夜、御津川氏は別の部屋で寝たみたいで、ベッドにすら来なかった。



翌朝。
私の前で黙って味噌汁を啜る彼をジト目で睨む。
ピアスは、昨日までしていた透明のものに戻っていた。
仕事に行くんだから、とわかっていても、それほど怒っているんだと私をさらに落ち込ませた。

「……なんか言いたいことでもあるのか」

はぁっ、とため息をついた彼が、箸を置く。

「……ある」
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