偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「いえ、とても美味しいです」

慌てて笑顔を作って意識を戻す。

「北海道産の、まだ出はじめのホワイトアスパラなの。
ホワイトアスパラはやはり、この時期のものが最高だわ」

「そう、ですか」

一口サイズに切ったそれを純さんがぱくりと食べる。
しかしながら私にはご自慢のそれの味だなんてわからない。
なんていったって御津川氏の言いつけを破り、レジデンスの最上階に来ているのだから。

部屋に閉じこもったのが朝食の片付けが済んですぐ。
今日は橋本さんが来る日だから、お昼はカフェに行こうかな、なんて考えていたら、ドアがノックされた。

「東峰様からランチのお誘いが来ておりますが」

「……は?」

わけがわからぬまま、橋本さんが差し出す封筒を受け取る。
中には純さんから、急だが一緒にランチをしないかとカードが入っていた。

……あの、純さんとランチ?

訝しんだところで理由がわかるわけでもない。
それに、断ったりしたらそれはそれで、恐ろしいことになりそうな予感がする。
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