偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「どうせ慧護が、反対してるんでしょ?
なら、簡単よ。
慧護は私が、もらってあげる」

ナプキンで拭かれた口の口角がつり上がり、にっこりと綺麗な三日月型になる。

「……え?」

間抜けにも、それをぼーっと見ていた。
もらうって、なに?
考えようとするけれど、あたまはついていかない。

「ホワイトアスパラも食べたし、そろそろフランスに戻ろうかと思ってるの。
慧護を一緒に連れていくわ」

「そんなの、勝手です……!
御津川さんの意思だって!」

御津川氏が私の傍からいなくなる? そんな現実、考えたことがなかった。
だって私は、彼に買われた所有物なんだから。

「この東峰の命令を、一介の警備会社の社長ごときが蹴れるとでも思っているの?」

グラスのワインを純さんは口に運んだ。
ごくごくとのどを鳴らして彼女がそれを一気に飲む。
東峰に命じられれば簡単に逆らえないのは、もうすでに学習していた。
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