偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
東峰は絶対王者。
そんなことをすれば、どうなるのかわからない。
現にあのときだって一時的とはいえ、株価が暴落した。

「あと、これ」

合図を送った純さんへトレイが差し出される。
そこから受け取った小さな紙切れを、彼女は私の前へ滑らせた。

「慧護があなたを買ったのは知ってる。
だからこれさえあればあなたは自由になれるでしょ?」

その紙切れ――小切手には2の後ろに0が7つ書いてあった。

「わた、しは」

「もう用は済んだわ、さっさと帰って。
いまから、外出予定があるの」

しっ、しっ、と邪険に手を振られ、立ち上がる。
そのままふらふらと部屋に帰った。

「奥様、大丈夫ですか」

帰ってきた私の顔を見て、橋本さんが心配してくれた。

「あっ、昼間っからワインなんか飲んで、少し酔ったみたいで。
ちょっと横になってきますね」
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