偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
今日は泊まって帰ると御津川氏が私を連れてきたのは、――処女を奪われたあの部屋だった。

「あのときは雰囲気もなにもなかっただろ」

短い口付けを繰り返しながら、彼に押し倒されていく。

「あれから李亜を抱いていいのか自信もなかったし」

「あっ」

ふっ、と耳に息を吹きかけられ、甘い声が漏れた。
あの日から御津川氏はずっと、私を抱いていない。
これが二回目だ。

「今日は思いっきり、李亜を可愛がる。
……愛してる、李亜」

「……ん」

唇が重なり、ぬるりと熱いそれが入ってくる。
初めてのあの日と違い、自分からも彼を求めた。

「もしかして初めて会った日、私にキス、しましたか?」

眼鏡を外し、ジャケットを脱ぎ捨てる彼を見ながら問いかける。

「したな。
俺がタクシー代を払う代わりに」
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