偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「どうして今日は、身分を隠してまで花婿の替え玉なんて」
「ただの気まぐれ?」
彼がグラスを揺らし、氷がカランと音を立てる。
「たまたま、本当にたまたま、詐欺で捕まったあの男と今日、挙式予定の女がいるって知ったんだ。
それで、どんな間抜けか顔を見に来た」
くいっ、とグラスの中身を彼が口に含む。
「思ったとおり、間抜けな女でさぞかしおかしかったでしょうね」
カモにされているなんて知らずに、この日を心待ちにしていた。
自分でも、なんて滑稽なんだと思う。
「そうだな。
でも同時に、どれだけこの女が今日を楽しみにしてたのか思ったら、可哀想になった。
だから、せめて式くらい挙げさせてやろうと思ったんだ」
ふっ、と唇を緩め、彼はグラスをテーブルの上に戻した。
同情、されていたのがなんか悔しい。
けれど、それで助かったのも事実。
「ま、それだけじゃないけどな」
御津川氏が頷き、砺波さんが私の前に紙を置く。
「ただの気まぐれ?」
彼がグラスを揺らし、氷がカランと音を立てる。
「たまたま、本当にたまたま、詐欺で捕まったあの男と今日、挙式予定の女がいるって知ったんだ。
それで、どんな間抜けか顔を見に来た」
くいっ、とグラスの中身を彼が口に含む。
「思ったとおり、間抜けな女でさぞかしおかしかったでしょうね」
カモにされているなんて知らずに、この日を心待ちにしていた。
自分でも、なんて滑稽なんだと思う。
「そうだな。
でも同時に、どれだけこの女が今日を楽しみにしてたのか思ったら、可哀想になった。
だから、せめて式くらい挙げさせてやろうと思ったんだ」
ふっ、と唇を緩め、彼はグラスをテーブルの上に戻した。
同情、されていたのがなんか悔しい。
けれど、それで助かったのも事実。
「ま、それだけじゃないけどな」
御津川氏が頷き、砺波さんが私の前に紙を置く。