偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「売買契約書だ」

「バイバイ契約書……?」

上手く字が、思い浮かばない。
その紙にもそんな字はなかった。

「ああ、今日の費用は俺が払った」

さらにその紙の上へ、御津川氏宛になっている領収書が置かれる。
名目は挙式費用一式になっていたし、金額も私が聞いていたものとほぼ同じだった。

「どうして、あなたが?」

「反対に訊くが、お前は払えたのか」

「うっ」

あとで払うから立て替えておいてくれと鈴木からは言われていた。
しかも、その資金は彼に預けた。
きっとそのお金はもうないだろう。
妙に後払いに拘っていたわけだ。

「ロ、ローンとか」

「詐欺で金を騙し取られたうえに、七百万もローンを組むのか?
莫迦じゃないのか」
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