偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「うっ」

前のめりになっていた彼が、はっ、と吐き捨てるように笑ってソファーに背を預ける。

「で、でも、私にはそうするしかないわけで」

鈴木にプロポーズされた日。
あんなに浮かれていた自分が莫迦みたいだ。
まさか、こんな日が来るなんてあのときの私は知りもしない。

鼻の奥がツン、と痛くなり、慌てて顔を上げると、目があった。
なぜかレンズの向こうの目は少しつらそうに歪んでいる。

「俺が、その七百万でお前を買う」

「……え?」

言っている意味が理解できない。
彼の長い人差し指がトン、と書類を叩いた。

「これがそのための売買契約書だ。
七百万で俺はお前を買う。
いや、もう払ったんだから買った、が正しいか?
買われたお前は一生、俺のものだ」

御津川氏はかなり、酔っているのだろうか。
じゃなければ、こんなこと。
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