偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
もうすでに、それの夫の欄には御津川氏の名前が記載してある。
促されて妻の欄を埋めた。

「じゃあ憲司、あとは頼んだぞ」

「了解」

書類を確認し、砺波さんは鞄の中にしまった。

「今日は助かった。
この埋め合わせはまた」

「上手くやれよ」

にこやかに砺波さんと握手を交わした御津川氏に連れられ、バーを出た。
エレベーターに乗り、ホテル階へ戻る。

「今日は泊まって帰るからな」

そう言って開けられた部屋は、最高級スイートルームだった。

「そう、ですか……」

もともと、そういうプランだったから問題はない。
けれど当初予定していた部屋よりも何ランクも上の部屋は、さすがというか。
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