偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「来い」

ベッドに座った御津川氏が、隣をぽんぽんと叩く。

「へ?」

けれど意味がわからず、そのまま突っ立っていた。

「来いと言っているだろうが」

腰を浮かせた彼が、私の手を引っ張る。

「あっ」

バランスを崩した私は必然、彼の胸に飛び込む形になり、そして。

「……あの」

「ん?」

気がついたらあたまは枕につき、私にのしかかる御津川氏を見上げていた。

「これはいったい、どういうことなんでしょうか」

眼鏡の向こうで目が細められ、彼の手がうっとりと私の髪を撫でる。

「結婚式を挙げたんだから当然、初夜だろうが」
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