偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
目玉がこぼれ落ちそうなほど、見開いた彼に繰り出したパンチはヘロヘロだった。

「面倒くさいことになった、やめときゃよかったとか絶対考えてますよね、絶対」

涙の浮いた目で、彼をじろりと睨みつける。

「いや。
ならもっとロマンチックにして、優しくしてやればよかったと後悔はしている。
……やめるか?」

眉根を寄せた彼の、両の親指が私の目尻を拭った。

「続けていいんで、その、できるだけゆっくり動いてくれたら」

「わかった」

再び、彼が動きだす。
やめてもよかったのだとわかっている。
けれど、私を気遣ってくれたのが――嬉しかったから。

事が終わり、ぐったりと疲れている私のあたまを、御津川氏が撫でてくれる。

「無理をさせて悪かったな。
今日はもう、ゆっくり休むといい」

彼の手が私の瞼を閉じさせる。
こうして私の、怒濤の一日は終わった。
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