偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「詰んだ、詰んだな……」

もう実家に帰るかホームレスになるかの二択しか残っていない。
どっちも選びたくないからいま、できる限りの努力をするしかない。
バタバタと身支度を済ませ、ドアを開けたところで御津川氏がちょうど、浴室から出てきたところだった。

「どこへ行く気だ?」

濡れた髪をタオルで拭いている彼は妙に色っぽいが、いまはそんなことを気にしている場合ではない。

「い、家に……」

脇をすり抜けようとしたけれど、腕を掴んで止められた。

「お前のマンションの部屋ならもうない」

「……へ?」

私の口から間抜けな音が落ちていったけど……仕方ないよね。

「昨晩のうちに引き払った」

「……へ?」

やっぱり、彼がなにを言っているのか理解できない。
引き払ってどうしようと?
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