偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
ドイツ製、白のSUVは滑るように街を走っていく。
エンジン音が独特なのは、さすが有名スポーツカーメーカーの車だから、というか。

街中の地下駐車場に御津川氏は車を預けた。
降りる前にサングラスを眼鏡に戻す。

「じゃあ、行くか」

ごく自然に、彼が手を繋いでくる。
それをどうしていいのかわからず、微妙に指を開いた形で固まった。
けれど彼は気にすることなくどんどん歩いていく。
最初に連れていかれたのは美容室だった。
とはいえ、大きな鏡とあの独特の椅子がなければ、ホテルのロビーと間違えそうな店内だったが。

「この重たい髪をどうにかしてくれ」

「長さはいかがいたしますか?」

「そうだな、李亜にこの長い髪は似合うから……」

施術用の椅子に座った私を挟んで、美容師の男性と御津川氏は勝手に話を進めていく。

「じゃあ、そういうことで頼む。
俺はしばらく、出てくるから」

「かしこまりました」
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