偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「はぁ……」

なんだか彼はやる気だが、私としては微妙な気分だ。
そんなことをしても中身が伴わなければ意味がない。
そして、私にはそんな自信がなかった。

「とりあえず、昼メシにするぞ。
腹、減ってるだろ」

私の意見など聞かずに、また彼は私の手を掴んでどんどん歩いていく。
今度来たのはフレンチのレストランで、個室へ通された。

「苦手なものや、食べられないものはあるか」

メニューを見ながら、御津川氏が訊いてくる。

「特には……」

「わかった。
……今日のランチコース。
以上で」

パタンとメニューを閉じ、彼はそれ以上訊かずに注文してしまった。
薄々気づいてはいたが彼は、黙って俺についてこい、Going My Wayタイプの方なのらしい。
そういう人は……ちょっと苦手だ。

昼食のあとは上品なセレクトショップへ移動する。
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