偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「いいじゃないか。
ほら、次」

やはり私の意見など聞かず、御津川氏の好みでどんどん服が決まっていく。
もっとも、私に選ばせたら、黒ばかりのしかも同じようなデザインのものばかり選んだだろうけど。

そのあともいろいろな店をはしごさせられた。
どこでも個室に案内され、店長や支配人が対応してくれる。
ソファーに座ってお茶を飲んでいるだけで希望の商品がどんどん目の前に並んでいくのはこう……ちょっと、面白くもある。

「そろそろメシ食って帰るか」

御津川氏が散々買い物して満足した頃には、もう日はとっぷりと暮れていた。

「そう、ですね……」

何着、試着させられたのかわからない。
そのほとんどはお買い上げか、セミオーダーになった。

……うん。

ちょっとスカートの丈が気に入らないとか、色違いがほしいとかで、彼はバンバンオーダーを命じていく。
御津川氏はスーツ以外の服でも普通にオーダーする、別世界の人間なんだって改めて思った。
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