偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
そんな世界に生きる彼の妻が、私なんかで本当にいいんだろうか。

晩ごはんはヒルズのテナントに入る、寿司屋だった。

「オススメで」

さらっとメニューも見ずに注文する御津川氏を黙って見ていた。
私の唯一の習い事である茶道教室が催す茶会でこのテナントに来ることはあるが、店に入ることはほぼない。

……高級すぎて。

その店で、自分が食事をすることになるなんて、誰が想像するだろう?

「今日は予定の半分くらいしか買えなかったな」

「……」

出てきた刺身を摘まみながら御津川氏はブツブツ言っているけれど……。
あれで、半分?
どう考えても車に乗らない量で、レジデンスに届けてもらうことになりましたよね?
怖い、セレブの感覚って!
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