偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
間抜けにも一音発してフリーズした。
好きに、っていったい?

「エステでも買い物でも好きにしたらいい。
もう話は通してあるから、ヒルズの中なら御津川の名を出せばなんでもできる。
ヒルズ外はいま、カードの手続きをしているから少し待ってくれ」

「は?」

やっぱり、彼がなにを言っているのかわからない。
買った女にさらに金を貢ぎこむなんて、莫迦なんだろうか。

「えーっと。
ちょっと待ってください」

「ん?」

僅かに首を傾けた彼が、隣に座り直す。

「要するに、私は働かずに好き勝手していい、と?」

「そうだな」

「この家の家事とかは?」

「ハウスキーパーに任せてあるからすることはないな。
食事は外食で済ませているし、なんならこれからは作ってもらうように契約を変えてもいい」
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