偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
くるくると指先で私の髪を弄びながら彼は淡々と話しているけれど。
それじゃあ、私を買った意味、とは?

「まあ、パーティやなんか、夫婦同伴のときは一緒に出席してほしい。
李亜にしてもらいたいことといえばこれくらいか?」

私の顔を見て彼がにかっ、と笑う。
ある程度の年になると、結婚しているかどうかで男性の評価が決まったりするから、そういうこと?

「わかりました、それくらいなら」

ようやく、納得がいった。
なら、私は私の好きにさせてもらうだけ。

「うん。
じゃあ、一緒に風呂に入るか」

「入りません!」

私の手を引っ張った彼の手を、払いのけたのはいうまでもない。



翌日、私が起きたときにはすでに、御津川氏はベッドにいなかった。
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