偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
とりあえず、なにか食べるために外出することにした。
私の家から運び込んだという荷物には服の類いが一切なく、仕方なく昨日、御津川氏に買ってもらった服を着る。

「可愛い、けど恥ずかしい……」

トップスが黒なのはいいが、オフショルダーで胸もとから肩が大きく出ているのがいただけない。
しかもスカートがオレンジと派手だ。
しかしながらどの服も似たり寄ったりで、諦めるしかない。

「まあ、でも……」

いままでのファスト店で適当に買った、カットソーとジーンズだとこの髪型には浮いていただろうから、これでいいといえばいいのか。

レジデンスを出て向かいのオフィスビルまで歩く。
一昨日、披露宴をおこなったそこの低層階には、カフェやスーパーが入っているのは知っていた。

ビルに到着し、まだスーパーは開いていなかったのでカフェで朝食を済ませる。

「……」

トレイにサーモンサンドとカフェオレをのせて適当な席に座りながら、複雑な気分になった。
だってここには披露宴の打ち合わせのあと、鈴木とふたりできていたから。
< 71 / 182 >

この作品をシェア

pagetop