偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「近江牛ステーキ弁当1980円……。
石垣牛牛すじカレー980円……」

なんだか、あたまがくらくらしてきた。
必要最小限の買い物に済ませたはずだが、すでに懐が厳しい。

「ああ、もういいや!」

開き直って、米沢牛ハンバーグのロコモコ丼をカゴに入れる。
支払いは大丈夫なはず、と思いつつ、ドキドキしながらレジに並んだ。

「――円になります」

告げられた金額は想定どおり、私の手持ちを大きく超えていた。

「あ、あの。
……御津川、です」

曖昧な笑みを浮かべ、御津川氏に言われたとおり名前を告げる。
本当にこれで大丈夫なんだろうかと疑いながら。

「かしこまりました。
ありがとうございました」

「どうぞこちらへ」

レジの店員が軽くあたまを下げると同時に、横から出てきた手がカゴを掴む。
そのままサッカー台へと運んでくれた。
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