偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
レジデンスに帰り、私の部屋だって言われた部屋に引っ込む。
そこは前に住んでいたマンションの部屋に近い状態にしてあった。

「じゃ、はじめますかね」

パソコンを起動させ、求人情報サイトをさすらう。
御津川氏は遊んで暮らせばいい、という口ぶりだったが、そんなの嫌だ。
そもそも仕事を辞めたのだって、私だって寿退社できるのよ、って見栄を張っただけで、一年くらいしたらまた、仕事をはじめるつもりだったし。

「どこかに引っかかるといいんだけどなー」

めぼしい会社のエントリーシートを片っ端から埋めていく。
転職斡旋サイトにも登録した。
ずっと画面を見ていて、凝り固まっていた肩をほぐす。
時計を確認したら、すでにお昼を回っていた。

「お昼ごはん食べよ」

レンジで買ってきたお弁当を温め、ダイニングテーブルで食べる。

「さすが、米沢牛」

値段だけ、いつもコンビニで買って食べるお弁当よりも美味しかった。
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