偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
手早く髪を結び、私はキッチンに立った。



「李亜、ただいま」

帰ってきた御津川氏は今朝と一緒で、私にキスをした。

「食事に……って、これ、どうしたんだ?」

ダイニングテーブルの上を見て、彼はそのレンズの幅と同じくらい、目を見開いた。

「作ったんですが、お口にあわなかったらすみません」

「いや、あわないなんてことはないだろ、李亜が作ったんだから」

脱いだコートを椅子にかけ、待ちきれないかのように彼がテーブルに着く。

「いただきます」

彼はわざわざ手をあわせ、置いてあるスプーンを取った。

「うん、旨い。
李亜は料理もできるなんて、凄いな」

ホワイトシチューを一口食べ、彼はにこにこ笑っている。
その顔になぜか、胸の中が温かくなった。
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