オフィスラブはじまってました
「大学三年までは一人暮らししてたんですよね。
 四年からは授業数少ないので、通いでいいやと思って、実家に帰りましたけど。

 何処に就職するのかわからなかったので。

 家から通えるかもしれないしなと思って、実家の部屋に置ける家具以外はそのとき始末したんです。

 でも、鍋釜は親も使ったりするので、そのまま置いてあったんですよ。

 で、こっちに引っ越してきたとき、それ全部持ってきてたんですけどね。

 あのデッカイ、おでんを炊いたことしかないパスタ用鍋とか」

「いや、おでんしか炊いたことないのなら、おでん鍋でいいだろう」

「いやー、パスタ用って売ってるとき書いてあったんで。
 まあ、どのみち、あれも焼けちゃいましたけどねー」

 などとくだらぬ話をしているうちに、会社前のバス停に着いていた。

 よし、いよいよっ、と思ったとき、ひなとがこちらを振り返り、

「あ、私、此処なんで。
 それじゃ、また」
と笑って言った。
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