オフィスラブはじまってました
「まだ入野さんは戻ってきていないようだな。
先に火をつけておこうか」
アパートに戻ると、柚月は、まだ明るいのに、ひなとの部屋の庭先でシングルバーナーに火をつけようとする。
いや……薪とかじゃないんで、先に準備しておく必要はないのでは、と思っていたのだが。
柚月は、
「湯でも沸かそう」
と言って、小さな鍋に水を汲んでくる。
まあ、カセットボンベも買い足してきたので、今から無意味に火をつけていても大丈夫そうではあったが。
そのう思ったとき、柵の向こうの道を歩いてくる入野が見えた。
「入野さん」
と声をかけると、ビニール袋と小さなダンボールを抱えた入野が振り向いた。